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2009/08/20

8/9 ソワレ「見知らぬ乗客」

もう10日も前の観劇だけど。
あの空間に居た事が今でも夢だったんじゃないかと思う。
確かにこの目で見た舞台は、なんだかぼやっとしていてとても不思議な感じがする。リアルな夢を見た後みたいな、キモチ悪いような心地よいような不思議な感じ。

グルングルンする記憶の渦の中にいる、ニノのブルーノ。
はっきりと表情を覚えていない。
後から写真や映像でその姿を見て、「あぁ、そうだった」と思い出すのだけれどあの時生で見た表情をはっきり覚えていない。
ただ覚えているのはブルーノが作り出す空気感と、存在感。
マーブリング絵の具を垂らしたような不規則で儚くて脆い、それでいて印象的な存在。

1幕は正直、二宮和成を生で見てやるぞ!という意気込みで終わった。

どんな芝居をするのか?
どんなに素敵なのか?
アイドルがどれほどのものなのか?

今思うと本当に本当にもったいないのだけれど、ものすごくアイドルニノを斜めに見てしまった。期待が大きすぎた分、「アイドルの演技なんてそんなもんだよね」と思ったし「意外と大したことないじゃん」と思った。

作品の中にうまく入り込めなかったのも原因かもしれないけれど。
どうもあまり得意ではないアメリカ映画特有の雰囲気が、むんむんの舞台で舞台にノリと勢いを求める私には物足りなさが残った。1幕の段階では出演者のアラばかりが気になり、演出が肌にあわず、いっくらニノが出ているからたって私は正直言って「面白くない」と思った。

後から思い返せば、2幕に繋がるさまざまな場面や
印象的なシーンも数あったのだけれど。

1番最初の列車のシーン。
ブルーノという人に違和感を感じつつも、
ガイとブルーノの不自然で不思議な関係が出来上がっていく様が面白かった。
一見めちゃくちゃなようだけど、ブルーノはいつだって一途でまっすぐな人だ。どんな事に対しても。

ガイの妻を殺すブルーノ
ブルーノの父を殺すガイ

交換殺人という一見完璧でいて、ひどく脆い犯罪自体がブルーノという存在と似ている。究極の秘密を共有する事で、ガイを縛り付ける。追い詰める。自分の物にする。

愛なのか。憎しみなのか。憧れなのか。

狂っているようにしか見えないブルーノの内側にあったのはとにかくガイと繋がっていたい事。

湖畔の遊園地での殺害シーンはとても印象的だった。
怖かった。
夜の遊園地の不気味な雰囲気。
メリーゴーランドにまたがるブルーノは、少年のようで、冷たい悪魔の様でとにかく怖かった。人を殺める事に快感を得るような。

これでガイを一生自分と繋ぐ事ができる?

母親とのシーン。
母親はママ。恋人。
このあやふやな関係性が独特の色気を生む。
黒いローブには着られちゃってたけど、そこがまたブルーノぽい。
チラリと覗く足とか。黒髪とか。首筋とか。タバコとか。
まるで少年の様なのに、時に男の顔をする。
かわいらしさと、薄暗さと、脆さと。
タバコの臭いが鼻をくすめて、フと我に返る。

色っぽいな。

残念な事に秋吉さんが…イマイチ。イマニ。イマサン。
とにかくいけてなくて残念。

殺人を犯し、ガイを求めても求めてもどんどん遠くに行ってしまう。
それを追って。追って。追い詰めて。
不意に現れるブルーノの青白さが怖かった。
ガイが幸せを噛締める瞬間に現れる青白い影。

どんどんどんどん追い詰められたガイ。
そして、約束の金曜日。

ブルーノは不自然に家を出る。
週末だけ。出かけてくると。

ガイは殺人を犯す。
ブルーノの父親を殺す。

2人が強烈に繋がった瞬間。
一生離れられなくなった瞬間。

それまで、ブルーノがガイを追いまわしているように見えたけど本当はガイこそがブルーノを求めていたのかもしれないと思った。
だれにでもある人間的弱さ、自分の弱さをありのままの彼に見つけて。
最初は嫌悪ばかりが押し寄せていたけれど、結局はそれが自分と同じ物だと気づいて。焦がれていたのはガイの方かもしれない。

2幕。
1幕での退屈さもなにもかも吹っ飛んだ。
ブルーノに魅せられて。
ニノの持つ世界観に飲み込まれて。
途中で起きた地震も何もかも、吹っ飛ぶくらい。

刑事に問い詰められて、完璧だったはずの犯行が脆く崩れていく。

グルグルと周る世界の中で、自分ひとりもがく。

ママ。ママ。

と叫んでも母親には見捨てられて。
もうどこにも逃げ場がなくて、開いても開いてもドアが続いて
止まらないし、止められない。

ブルーノの孤独と、絶望と、焦りと、悲しみがヒシヒシ伝わってきて心が締め付けられる様だった。本当にどうしようもない人間だけど。ブルーノという人間は。でもこんなにもピュアで、不器用で、かわいい人間なのだと思うとキュンとした。

ニノの持つ世界観とこの役がぴったりあっていたんだと思う。

見ているこちらが苦しくなるほど追い詰められて、最後。

「自分が自殺する時はこの世で一番憎んでいる相手に殺されたように見せかけて死ぬ」

電車の中で得意げに話していたその言葉を、ブルーノは実現した。

一生涯、ガイを縛り付けて。
ガイはブルーノに2度の口づけを。

憎むと愛してるは紙一重で、そのあやふやさがこの作品の軸というか魅力になっている。ブルーノがガイを愛するのと同じくらい、ガイはブルーノを愛していた。

同じ電車に乗り合わせた見知らぬ乗客同士が、いつしか互いを必要とし無二の存在となった不思議。

見終わった後、なんとも不思議だった。
たしか、ニノを見に来たんだと思ったけど…
いつのまにか、舞台の中のブルーノという人物にのめり込んでそれがニノだったか、そうでないのか分からなくなった。

いつもバラエティやテレビドラマで見てきたニノとは全く違うものが見れた。
こんな一面もあるのかと。
それは鳥肌が立つような演技力!とか、天才的役者!とか
想像していたようなものすごいものではなかったのだけれど、
かわいい!とか、格好いい!とかでもなかったんだけど、
なんだか凄く胸に刺さった。グサリと。

ニノの演じたブルーノの世界観を、私は忘れる事はないだろう。
生であの舞台の世界観を感じることができたことに、心から感謝。

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